メタボリズム(新陳代謝)
メタボリズム(新陳代謝)
埼玉県立近代美術館のある北浦和公園には、黒川紀章の作品「中銀カプセルタワー」のカプセル住戸ユニットが置かれていて、丸い窓から中が覗けるようになっている。六本木、森美術館で開催されたメタボリズム展の時、六本木通り沿いに置かれていたカプセルが寄贈、移設されたものだ。
Wikipediaによれば「中銀カプセルタワー」は2007年に区分所有者などの4/5以上の賛成を得て建て替えが決議されたが、跡地にマンションを建築する予定だったゼネコンが倒産したため、決議は2009年無効になったという。今は、区分所有者が徐々に「保存派」の人に入れ替わりつつあり、Airbnb利用の人気が集まっている。見学会も盛んだ。
中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクトという有志団体が、このビルを保存・再生しようとして活発な活動を続けている事をこのたび初めて知った。
https://www.nakagincapsuletower.com/project
下記は彼らの宣言。
中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクトは、この歴史的建築物を、後世に末永く引き継いでいくことを目的とし、そのために下記3つをおこなっていきます。
1. 建物を使い続けるために、カプセルのオーナー、管理組合に対し、適切な修繕活動を促進していきます。
2. カプセルの価値を高めるために、新たな使い方を提案します。
3. 建物の認知を高めるために、広報活動に力を注ぎます。
さらに、こういう方もいる。
https://www.facebook.com/NakaginCapsuleRenovation/
黒川紀章のメタボリズムは、古くなったらハード=カプセル住戸のユニットを丸ごと交換するコンセプトだったが、今まで一度もユニットは交換されていない。この「保存・再生プロジェクト」は、ハードは修繕維持して、ソフトの力で建物の寿命を延ばそうというコンセプトである。経済力の伸長を裏付けにスクラップアンドビルドを謳歌するはずだったメタボリズムが、時が経ち、地道なソフトに助けられているアイロニーとも見える。未来を夢想するだけで暴走できた時代から、現実を見据えた安全運転の時代へ移行したのだろうか。
このビルは経営破綻したゼネコンの倒産に助けられてまだ存在している。メタボリズムの墓標と云うアイロニー。黒川紀章の人生と同様、大掛かりで命懸けの冗談のように見えてしまう。
2017年9月9日土曜日