ゴンズイ
ゴンズイ
今の場所に引越してから半年以上ずっと気になっていた。ベランダのすぐ脇に寄り添うように幹だけがひょろひょろ伸びている低木。2mぐらいの高さだったのが、今は3m近くまで成長し葉も茂ってきている。わざわざ買って育てているハーブ類は、虫の食べ放題攻撃にあって無惨な姿になってしまっているが、この雑木は虫もつかずに、透き通るようなきれいな葉を維持している。
例の『フィールド・ガイドシリーズ 葉で見わける樹木』を入手して、最初に調べてみた木だ。葉は羽状複葉、対生、鋸歯。どうやらゴンズイ=権萃という名の木のようだが、今まで確証が無かった。「地味で特に有用性もない」と書かれている。ゴンズイは樹皮の模様が魚のゴンズイに似ているからつけられた名前だとする説もあるが、判然としない。さらに「木全体に汗臭さのような匂い」「小便の木」「猫のクソの木」などと書いてある。酷いいわれ様だが、近寄って嗅いでみても葉をちぎってみても、それ程の事は無い。
だがしばらく経つと、窓を開ける度にまさにネコの小便のような匂いが猛烈に漂うようになった。夏に向かいこのままだと窓を開けないわけにも行かないので、ゴンズイ(仮称)を伐採してしまおうかとも思ったが、匂いがあまりにリアルなので本物のネコとしか思えない。本物のネコならば、ネコ除けを設置するしかないかな。毒を置くわけではない。センサー付で各種小動物が嫌がる超音波を出し同時に発光する機械を設置してみたら、ただちに匂いが消え失せた。中国製。安価。凄い効果だ。ゴンズイ(仮称)さん疑って悪かった。ネコの所為でした。(だが、家人が過日目撃したタヌキまたはハクビシンの可能性もある。どんな田舎なんだ。)
そして今日気づいたら、視線から逃れるようにこっそり赤い実がひとつだけついている。「秋になると赤い実をつける」というのはこの事だったのか。これで(仮称)が取れて、正式に「ゴンズイ」である。地味で有用性も無い奴だけど、だんだん可愛くなってきた。
2017年9月13日水曜日