ARK NOVA 2017
ARK NOVA 2017
ARK NOVAが東京ミッドタウンの芝生広場で膨らんだ。
担当の小俣さんに訊くと、朝8時に開始して1時間程の作業だという。その作業の一部始終を見るために、久し振りに通勤時間帯の満員電車に乗る。ミッドタウンに着くと、既に空気を入れ始めていた。クレーン2台で上方に引っ張り上げながら、膨らみ方が偏らないように調整しつつ慎重に作業している。まわりでは見学に集まった人たちがスマホやカメラを構えて思い思いの場所で陣取っている。通りすがりの人も立ち止まって眺めている。ミッドタウンの屋外テラス席に座って、定点観測的にながめる事にした。
最初はクシャクシャだった赤い膜は、空気が入るにしたがって刻一刻と形を変えながらずんずん大きく立ち上がってくる。完全に膨らむまで1時間半ぐらいかかった。高さ18m、幅30m、奥行36m、500人収容のコンサートホール。
非常に強い台風18号が近づいている。ARK NOVAは風速13m以上になると、安全のため空気を抜いて萎ませる事になっている。ノアの方舟は嵐と洪水の中で生き延びるための装置だったが、現代の風船型方舟は風に弱い。すぐにたたむことになるかも知れないし、そうなれば、再度膨らませるところを見られるかもしれない。
ARK NOVAは東日本大震災で被災した地方に復興支援として音楽を届けるため、移動可能な仮設のコンサートホールとして計画された。ルツェルン音楽祭と梶本音楽事務所の被災地への思いに共鳴した磯崎新とアニシュ・カプーアが協働で設計し、実現に漕ぎ着ける。2013年から2015年にかけて松島、仙台、福島の3カ所で設置され、そのあと東京に漂着した。東京の人は忘れているかも知れないが、東日本大震災は現在進行形である。
ミヒャエル・ヘフリガー(ルツェルン・フェスティバル芸術総監督)は、今回のインタヴューで下記のように語った。
このたびルツェルン・フェスティバル アーク・ノヴァが東京・六本木に仮の居場所を見出したことに深く感動しています。東京の中心でこの魅惑的なプロジェクトを実現するため熱心に支援してくださった東京ミッドタウンマネジメント株式会社に感謝いたします。これは何百万もの日本の人々に共有されるとともに、人類史上最悪ともいえる自然災害と人災に対する祈りにもなるでしょう。
2017年9月14日木曜日