八島太郎

 


『あたらしい太陽』

(晶文社1978)(The New Sun  -Henry Holt & Company Inc.1943 )

『水平線はまねく』

(晶文社1979)(Horizon is calling  -Henry Holt & Company Inc.1947)


八島太郎(1908-1994)の自伝的作品とその続編。戦前の日本で画家を志しながら、思想犯として何度も逮捕拘留された挙句、アメリカへの脱出を決意するまでのことが綴られている。


各ページ上段には白黒の力強い線画、下段には3〜4行程度の簡潔な文。全て同じフォーマットで淡々と進む。原作は渡米後アメリカで書かれたので英語だったが、おそらく当時の八島の英語力では簡単な語彙で文を構成するしかなかっただろう。その簡単な言葉が、むしろストレートに刺さる。


ホメロスやダンテのことを意識していたのかどうか、この本は叙事詩的な一編になっている。緩やかな韻文による叙事詩。叙事詩は、音として発声される事を前提としている。ならば、今回は黙読したが次は声に出して読んでみたい。胸が苦しくて声にならない場面もあるだろうが。


『あたらしい太陽』巻末の「取材・資料提供」に、1960年代からアメリカに住む従兄・金子潤(1942-)の名前があった。潤と八島太郎とは、どんな関係だったのだろうか。

 

2017年9月5日火曜日

 
 

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