スズメ

 


カラスやハトは大賑わいだが、この辺りではあまりスズメを見かけない。どこにでもいるありふれた鳥だと思っていたが、どうしたことだろうか。

「人の生活の場のそばで子育てすることで天敵を避けており、人の気配がないところにはいない。過疎で人がいなくなると、スズメもいなくなるという。」興味深い説が最近入手した図鑑に記されていた。(『井の頭公園いきもの図鑑』高野丈2017)ここは、過疎地のようだ。


あの荒俣先生も「日本では最も一般的な鳥である」仰っている。いつものような非学術的宣言だが、彼が調べたスズメに関する博物誌はさすがに面白い。曰く、


・古代西洋には、スズメの雄は1年しか生きないという俗説があった。しかしアリストテレスは『動物誌』で、スズメは成長すると<あごひげのあたりの黒い所>が見られることから、この説は前年のスズメを別のものとした誤りだと述べた。

・中世の博物学者バルトロミオは、スズメを好色な鳥として、その肉を食えば性欲が高まると述べている。

・スズメはきれい好きで、雛も自分で汚物を巣の外に掃き出すようしつけられる。そのためイギリスでは、スズメの糞とともに手を洗えば清潔を保てると信じられた。

・プロシアのフリードリヒ大王はサクランボを好物にしていたが、この実がスズメに食われることはなはだしかったのでスズメ駆除の勅令を出した。しかしその結果、害虫の大発生をまねいた。非を悟った大王は、以後鳥類の保護・輸入策をとり、害虫の駆除に努めた。

・中国には古来スズメがハマグリに化身するという俗信があった。『逸周書』は「秋の季に雀が大水に入って蛤となる。雀が水に入らねば国に淫佚(いんいつ)の事が多い」これは中国で古くから考えられた生物発生の4区分(胎生、卵生、化生、湿生)のうち、化生の例に該当する。『日本書紀』斉明のくだりに「雀海に入って雀魚(スズミヲ)となる」とあるのも、この影響であろう。

・中国の密法によれば、スズメを捕らえるには高梁酒に漬けたのちに、日干しを3回繰り返した餅米を地面にまけば良い。

・スズメの肉はスモモや動物の肝臓と食い合わせてはならない。(『本草綱目』)

・こころときめきするものすずめのこかひ(『枕草子』)


マタイによる福音書には、

・二羽の雀が一アサリオンで売られているではないか。だが、その一羽さえ、あなたがたの父のお許しがなければ、地に落ちることはない。あなたがたの髪の毛までも一本残らず数えられている。だから、恐れるな。あなたがたはたくさんの雀よりもはるかにまさっている。(マタイ10:29-31)

 

2017年8月1日火曜日

 
 

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