Koichiro Sugiyama
Koichiro Sugiyama
アトリエ・ピーター・ズントーで働く若い建築家・杉山幸一郎さんを交え会食。
去年6月にいくつかのズントーの建築を訪ねる機会を得た。ハルデンシュタインのアトリエも外から拝見し、自然に囲まれた彼らの仕事環境が作品の質を支えているのではないかと感じていた。
自然は人の精神活動を邪魔しない。1日や1年といった大きな時間の循環が支配する環境である。自然の中では謙虚に頭を垂れ沈思黙考する習慣が無意識のうちに身につくだろう。また、食についても。彼らが普段食べているのは、芋、チーズ、パン、ワイン。保存可能な伝統的食材を食べ続けている。何を食べ、何を飲もうかと思い煩う事も無い。熱気と刺激が充満する雑然とした虚飾の都市で行う設計活動とは、自ずと違いが滲み出ると云うものだ。杉山さんも、東京では気が散って設計に集中できないんじゃないかと仰る。残念だがそうかも知れない。
杉山さんから次のような話を聞いた。朝スタッフが出社する時間には、ズントー自身はスタジオに接する自宅にいて、大概クラシック音楽をかけているという。スタッフの間では、その音楽がその日の彼の気分を表していると云われているようだ。スタッフに対し、意識的な注意喚起をしているのかも知れないな。「ヤバそうな曲」がかかっている日には近づかない方が良い。つまり、結構怒る人らしい。そりゃそうだろう。あれだけ細部にまで注意を払う人だから。
ズントーの仕事は我らの時代の宝物である。未見の作品を全て訪ねてみたいし、新作が待ち遠しい。
2017年8月11日金曜日