光るモニター

 


今回の出張は、往復で6本。

・湯を沸かすほどの熱い愛

・嫌な女

・The Accountant

・Rogue One

・Allied

・Passengers


出張中はネットの繋がる所であれば『青空文庫』のお世話になることが多い。今回はツルツルピカピカのドバイで、谷崎の『陰影礼賛』を読んだ。我ながらナイスな選択だ。


『陰影礼賛』は建築を志した若かりし日に、磯崎さんを含む年長者誰もがしたり顔で「これ読まなきゃ始まらない」的な評価を下していたのを聞き、構えて読んでみたら、頑固な普請道楽親父の愚痴だった。


あれから幾星霜、ツルツルピカピカの出張先でいたたまれず、闇が堆積したようなあの文章をもう一度読み返したくなった。相変わらず親父の愚痴炸裂が面白いが、かつて年長者がこの文を激賞していた訳が素直に分かるような気がする。


映画は、フィルムを透過した光を幕に連続投影しその反射を眺めることだ。読書も、紙に染み込んだ印刷用インクに光を当ててその反射を読み取っていく作業だった。どちらも光源を直接眺めることはなかったが、今は映画も読書も、光源のピカピカを直接見る羽目になっている。


バックライトで均質に一点の曇りも無く光る平滑なモニターを通して読む『陰影礼賛』は、果たして『陰影礼賛』なのだろうか。

 

2017年5月3日水曜日

 
 

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