引越

 


子供の頃、膨大な父親の蔵書の隙間で育ったこともあり、いまだに既読未読に関わらず背表紙が並んでいると胎内回帰的に安心する。あらゆる意味で、本は育ての親である。親を捨てるわけにもいかない。親を古書店にも出せない。ここにもそこにも親が溢れていて家人には叱られ続けている。


そして人生10回目の引越。一番重いのは本だ。引越屋からもらう「段ボール箱・小サイズ」というのは、本を一杯にすると一般人が持ち上げられる最重量級の重さになるであろうサイズらしい。これ以上の大きさの箱に本を詰め込むと、持ち上げた時に無事では済まない。本の段ボール箱を持ち上げる時は年老いた親を背負うことにも似て、こちらの腰にも負担がかかる。3週間以上かけて本を整理しながら箱詰めしたら、慢性の筋肉痛になった。体の至るところが軋んでいる。本と行動を共にする限り。引越は体力的に今回が最後かも知れん。


引越当日、引越屋さんの仕事ぶりを拝見していると、一見ひ弱に見える若者が、あの「段ボール箱・小サイズ」を2つ重ねて運んでいる。プロは凄い。

 

2017年2月28日火曜日

 
 

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