散歩
散歩
寒くなってきたので、朝散歩に出かけるのが億劫になってきた。スマホの万歩計によると、普段は散歩を加算して漸く1万歩になるぐらいの歩行距離。長時間座ったままの仕事なので、寒くても出かけた方が良いのだろうな。
季節を問わず、この公園内で一本の木を選び、その前に座り込んで、一日5〜6時間ぶっ通しで樹の鉛筆スケッチをするおじさんがいる。同じ場所が数日間続く。いつもソロ活動。どの樹を選ぶのか動機はよく分からない。何の変哲も無い樹の傍らにゴザを敷いて胡座をかき、幹を凝視しながら左手に持った鉛筆を走らせ、ガムテープのようなもので張り合わせて大きくした模造紙のように見える紙に、夕闇が迫るまで一心不乱に描き続けている。原寸で細密描写をしているのか?鬼気迫るオーラを放出しているので、未だ近寄って声を掛ける勇気が出ない。寒くないのだろうか。
少し早めに散歩に出かけると、カラスを手なずけているおばさんを見かけることがある。歩きながら何か餌のようなものを撒く。するとカラス2羽が歩み寄ってきてそれを食べ、おばさんの後をついて行く。またおばさんが撒く。カラスがそれを食べる。撒く。食べる。明らかにカラスは喜んでいる。おばさんが時々しゃべる言葉をカラスたちは理解しているようにも見える。おばさんがいない日も、カラス2羽は同じところにやってきて、おばさんを探している。かつて鈴木五郎からカラスを飼っていた話を聞いて、その時は半信半疑だったが、カラスも人になつくことを目の当たりにして、五郎さんの話もホントのことだったと今にして思う。
朝の公園でフルートを吹き続けるおじさんがいる。グラウンドでラジオ体操をやってる高齢者たちの脇で、ベンチに座って無調即興独奏曲をピ〜ヒャラピ〜ヒャラ吹き続けている。朝の散歩は決まった時間帯ではないのだが、そこを歩くと必ずピ〜ヒャラピ〜ヒャラなので、かなり長時間吹き続けている筈だ。ラジオ体操の伴奏音楽との前衛的ポリュフォニーがカオティックに響き渡る。フルートおじさんにとっては一種の健康法かも知れないが、あまり健康的な感じがしない。この公園にはベンチ付のテーブルがいくつかあるのだが、そのテーブルの上に正座して落語の練習をしている御仁もたまに見かける。ラジオ体操とフルートと落語のテーブルの上の偶然の出会い。
2017年11月18日土曜日