からすたろう
からすたろう
「ときの忘れもの・拾遺」ギャラリーコンサートで坂本長利が朗読する『からすたろう』を、息をひそめて聞いた。朗読の最後に、淡野弓子のうたう『朧月夜』
菜の花畠に 入り日うすれ
見わたす山の端 霞みふかし
春風そよ吹く 空を見れば
夕月かかりて におい淡し
里わの火陰も 森の色も
田中の小路を たどる人も
烏の鳴く声も かねの音も
さながら霞める 朧月夜
この際、こういう分類に意味があるかどうか分からないが、
『からすたろう』は散文、『朧月夜』は韻文。
『からすたろう』は自由なリズム、『朧月夜』は8・6の定型。
『からすたろう』は話し言葉、『朧月夜』は歌曲。
二つの異質な詩が解け合い、波になり、ぼくらを懐かしい記憶の中で漂わせてくれた。
2017年10月3日火曜日