CARP

 


この25年間、プロ野球を見ていなかった。だが、何を隠そう本籍広島、細胞レベルまで全身カープ、流れる血まで真っ赤なのである。そして今年は25年振りのリーグ優勝めがけて絶賛驀進中(ばくしんってこう書くのね)、今夜は虚人に勝ってマジック18。テレビで野球観戦はしないけど、毎夜秘かに結果を調べては喜びを噛み締めるのである。


1975年、紅顔の美少年だった小学生の私は、その年急激に強くなったカープの赤いキャップを冠って、虚人の帽子が蔓延している沼津市の小学校に通学していた。初優勝が決まる10月15日の虚人戦はデイゲームだった筈だ。記憶の中では何故かその試合を学校の教室で、皆揃って見ている。初優勝の瞬間、教室は悲鳴と同時に歓喜の声でワーッと沸いたが、広島出身の小学生は無言で涙を堪えていた。少年にとってカープは野球のチームというよりも、自らに流れている赤い血を確認するためのセンサーだったと云っても良い。広島のことを初めて遠い故郷だと認識したのは、涙をこらえていたこの時だったのだろう。


浮かれていると、優勝が遠ざかる。無関心を装っていると、いつの間にか優勝が近づく。そんなわけはないのだが、なんだか落ち着かない。

 

2016年8月26日金曜日

 
 

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