アル=アズハル・モスク
アル=アズハル・モスク
「なんだかんだ言ってもエジプトがアラブ諸国の盟主であり続けているのは、アル=アズハルがカイロにあるからだ」とムスリムの知人から聞いていた。機会があればモスクを訪ねてみたかったが、その時が来た。
アル=アズハル・モスクに併設される形で誕生したアル=アズハル大学は現存する世界最古の大学のひとつで、イスラム教スンニ派の最高教育機関とされている。ここで学術研究が始まったのが975年のラマダン月。今はラマダン月の真っ只中、この時期に相応しい建築行脚になるだろう。
大学は「入学随時」「出欠席随意」「修業年限なし」という驚くべき太っ腹な原則を守っていたぐらいだから、異教の外人がモスクを覗くぐらい構わないだろう。商店街に面した小さい入口からモスクに入ると、誰からも呼び止められない。お金も請求されない。中にいる人たちは、揃ってかしこそうに見える。おお!これぞ学問の自由だ。門戸開放万歳!カイロの最高学府は入学だけでなく「見学随時」だった。
入口を入り、屋根の無い通路を抜けると中庭に出る。半分は修理工事中。この矩形広場の一面がモスクの入口面である。中に入ると天井吊りのファンがゆっくり廻っていて、外の灼熱がウソのように涼しい。なんだろう、このサウナの休憩室のような気配は。薄暗い室内を見ると寝転がってる人が多い。後で分かったことだが、ラマダン中はモスクに住んでいる人が多いらしい。昼間はモスクの中でクルアーンを読んだり、祈りを捧げたり、ゴロゴロ昼寝したり、日没後はモスクの提供するイフタールを食べたりして、この場で一か月過ごすという。
柱頭まで3m程度、人間的スケールの石柱が林立し連続尖頭アーチを支えている。時代をまたいで何度も改修を繰り返しているのだろうか、柱頭の様式はいろんなものが混在している。平天井は木製梁のあらわし。
今まで訪ねたモスクは、ほとんどのところが観光用にシフトしてしまっていたが、ここはまるで様子が違う。ラマダン中ここに集う人たちは観光客など気にする素振りも見せない。人々の生活の中でモスクが生きているのだろう。オッサンたちは寝ていたけど。
2016年7月6日水曜日