ときの忘れもの・拾遺
ときの忘れもの・拾遺
http://blog.livedoor.jp/tokinowasuremono/archives/53243962.html
極少人数対象の贅沢なコンサート『ときの忘れもの・拾遺』第2回目は、富田牧子+塩谷牧子、二人の牧子による「J.S.バッハへ〜チェロとギターによるソロとデュオ」20世紀以降の優れた曲の数々を、18世紀ドイツ・バッハの曲で挟むサンドイッチのような構成のプログラムでした。バッハの味は現代曲を挟み込んでも揺るぎないものです。実に美味しいサンドイッチを味わうことが出来ました。
バッハの曲が300年後の現代まで色褪せず力を持続し続けているのは、バッハが人間の小さな想像力に頼らずに、徹底して天与の法則に基づいた作曲をしていたからでしょう。天与の法則とは、ピタゴラスの発見以来研究されてきた科学としての音の特性、つまり「2つの音がオクターブの関係にある時、その波長比は1:2」とか「5度の関係の場合、2つの音の波長比は2:3」とかいうアレです。物理学そのものです。時代や環境によってフラフラ変化する人の営みと絶縁し「法則」そのものを基礎に据えているからこそ、バッハの曲はどんな時代や環境にあっても強度を保持している、と云えるのではないでしょうか。
チェロとギターはどちらも人体に近いサイズの楽器で、マン・レイのコラージュを引き合いに出すまでもなく、女性の体をなぞったような形をしています。それを二人の牧子がヒシと抱きしめながら魔術のような指使いで演奏する様は、聴覚だけでなく視覚をも楽しませてくれる、アートギャラリーに相応しい美しさでありました。
2016年6月8日水曜日