Zumthor
Zumthor
かねてから実見したかったPeter Zumthorの建築をいくつか訪ねる機会を得た。
事前に調べてみたら、彼の代名詞となっているヴァルスの温浴施設は改修工事中で諦めたが、ベネディクト教会、ローマ遺跡のシェルター、事務所の建築群、そしてブレゲンツ美術館を見ることが出来た。
建築を見て感動できる感性を持っていることを感謝したい。特にベネディクト教会、ブレゲンツ美術館の二つは、最近見たものの中では、イスタンブールのスレイマニエモスク以来の感動を与えてくれた。現代建築のうちいくつが、この建築のもたらす感動に匹敵出来るだろうか。何に/何故感動するのだろう。発狂寸前の緻密で丁寧な設計と、それを実現するための血を吐くような苦難、そしてそれら舞台裏を一切感じさせない自然で静かな佇まい。建築がまとう相反するような2つの側面をどちらも知ってしまったからだろうか。「アンビルト」というカテゴリー=括弧付の「建築」には望めない、実体として結実した奇跡が触れられるところに存在する、そのことに感動すると言っていいかも知れない。
製図板の上の手描き図面で、奇跡のような建築を生み出す芸術家が同時代にいることに、頭を垂れつつ感謝したい。
2016年6月27日月曜日