ポリーニ・プロジェクト 2

 


ベリオ、ブーレーズ、ベートーヴェン〜ポリーニ・プロジェクト2夜目@東京文化会館 小ホール


ベリオ<セクエンツァ>

Ⅶ    オーボエのための古部賢一

Ⅸ    クラリネットのためのアラン・ダミアン

Ⅻ    ファゴットのためのパスカル・ガロア


ブーレーズ<弦楽四重奏のための書>よりⅤ Ⅵ

ベートーヴェン<弦楽四重奏曲第16番 op.135>

 ジャック四重奏団


凄かった。ベリオ作曲、ファゴット・ソロの曲である。ステージも客席も暗闇。そこに楽器を持ったガロアが静かに登場し、拍手をも受け付けない只ならぬ雰囲気の中、演奏が始まった。暗譜。照明は暗めに抑えられている。すぐに気づくのだが、息が途切れない。息継ぎしていない。循環呼吸だ。その循環呼吸が、1分経っても、2分経っても、5分経っても、10分経っても終わる気配がない。途切れずに音楽の表情は千変万化、無限に続く大きなうねりをつくっている。聴く我々が呼吸困難になりそうだ。ダイビングはしたことないけど、深い碧の底に引き込まれる酸欠ダイバーはこんな気分になるに違いない。嗚呼、生きているうちに演奏が終わってくれて本当に良かった。


息をひそめていた聴衆から、弾けるようなブラボー。


作曲家ベリオは、この演奏者ガロアと協働してこの曲を作ったという。作曲家は、その時代を超えた演奏技術を自作に盛り込もうとするものだ。そして、選ばれた演奏家でないと演奏困難なこの曲を聴いた聴衆は、その時その場にいた特権的な気分に充たされる。他人による再現を拒否する構えの曲。今後も、録音でこの曲を聴こうという気にはならないだろう。磨き上げた一回性。現代音楽は事件の匂いがする。 だから楽しい。


今夜はベリオ=ガロアの印象が強烈すぎて、その他の演奏は申し訳ないが「刺身のツマ」でしかなかった。美味しいツマでしたが。


深夜、熊本でM7.3の大地震。

 

2016年4月15日金曜日

 
 

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