Seoul 2

 


景福宮は北京に比べればドールハウスだが、それでも大規模な建築群である。昨日の宗廟では、装飾を丁寧に排した上での極めて繊細なデザイン処理の痕跡を感じることが出来たが(例えば、石積みの石の成を一段ごとに変えていくような配慮)、ここ景福宮は良くも悪くも、ある種の均質なシステムが全体を覆っている。規模が大きいという理由もあるだろう、同種のデザインや材料を反復使用することで空間を効率よく埋めていこうとする意識が滲み出ている。白井晟一が称揚した宗廟の崇高性は、ここ景福宮では望むべくもない。今日ではソウルの観光地で韓服を着て歩くのが流行っていて、韓国の若者のみならず、中国をはじめとしてアジアの少年少女たちが色鮮やかな衣装をまとって自撮り棒を振り回している。その姿を見ると、どこぞのテーマパークに紛れ込んだかのような気にさえなる。


景福宮の南側、世宗大路でこのところ週末定期的に行われている反大統領派のデモ。親大統領派も少数ではあるが同時にデモを行っているようだ。夕方6時から正式にデモが開始するのに合わせ、昼過ぎからすでに人が集まりはじめ、ステージでは屋外コンサートのようなウォーミングアップが始まっている。巨大なスピーカーがクレーンからいくつも吊るされ、景福宮の北側にある大統領府=青瓦台まで届くかのような大音声を盛大に響かせている。彼女にはこの音が届いているのだろうか。ミラノ・サンシーロスタジアムで見た群衆も高々10万人だった。100万人単位で同じ目的を持った人間が一カ所に集まる景色は滅多に見られない。警察車両や(韓国で何と呼ぶかは知らないが)機動隊が周辺を固めているものの、一触即発の暴力沙汰が起きそうな気配は微塵もない。スピーカーの音はでかいが、のどかな大晦日の日暮れ前である。デモが本格的に始まってしまうと、巻き込まれてこの寒空でトイレにも行きにくくなりそうなので、そそくさと現場を離れ食事に。義姉の知人が切盛りするレストランで今年の食べ納め。

 

2016年12月31日土曜日

 
 

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