カイロ ドバイ
カイロ ドバイ
カイロからドバイに移動。日本から眺めるとこの二カ所は地理的に近いが、大きく性格が違う。
カイロにいると、自分が極東の島国からのこのこやってきた黄色い猿であることを意識させられる。5000年の歴史を背負うプライドに満ちた威厳あるエジプト人のお顔が実に濃いこともあり、異質なものはあぶり出されるのだろう。「カイロ」と聞いて、行ったことのある人ならば即座に思い出すのが道路交通事情。すべての運転手は我先に前に行こうとするあまり車線を無視しクラクションを鳴らし続けながら蛇行し、焦るあまり発生する渋滞で全員前進不能に陥っている。結局慢性的大渋滞。全ての車は軽い衝突を繰り返した挙句ボコボコ。その隙間を素知らぬ顔で横断する歩行者。横断歩道や歩行者用信号は皆無。道に穴が開き、あいた穴にゴミが溜まり、その上から砂漠の砂がまぶされる。カオス。
ドバイに来ると、自分がなにものであるかを意識させられることが比較的少なくなる。世界中から人が集まって、市域の人口300万人のうちUAE国籍は人口の17%のみ。インド、パキスタン、バングラディシュ、スリランカなど、インド方面からの流入人口が実に75%を占めている。他にもフィリピンやシンガポール、また湾岸諸国やアフリカ、ヨーロッパからのビジネスマン、さらに中国を筆頭に世界中からの観光客が入り乱れる混沌である。混沌はカオスと同意か。だが砂漠の街であるにも拘らず砂溜まりやゴミが無い。街がきれいなことも世界中から人が集まる理由の一つだろう。きれいなカオス、なのか。シンガポールを手本にして街づくりを進めたというのも頷ける。
ドバイは海岸沿いに線状に延びて発展し、幹線道路と鉄道も海岸線に平行に走っている。そこを大量の車や客車が高速で移動する。人や物の見えるものばかりの移動ではない。ネットは海岸線を意識した線状の発展ではなく、地球表面を覆い尽くす面的な広がりをもち、それこそ光速で運ばれている。移動と混沌がドバイを支えている。
かつて人種の坩堝と云われていたアメリカは、すでに移民制限政策を準備しはじめた。これでアメリカがアメリカであった原動力=混沌のエネルギーは決定的に降下する。国を閉じ、単一民族神話と捏造された歴史をありがたがり、猿でもわかる単純な言説と粗雑な思考に簡単に動かされる。海外には行きたくない。パスポートを持っている人の割合が少ない。そんな国に成り下がっていくだろう。おや、それは今の日本かエジプトか。
2016年11月22日火曜日