シナン

 


アヤ・ソフィアとスレイマニエ・モスクを訪ねる前に『シナン』(夢枕獏・中公文庫)を読んでからイスタンブールに向かう。建築のド素人みたいだがしょうがない。横着してイスラム建築についてまともに学ばず、建築家・シナンについても無知同然だったからだ。オスマントルコ帝国の絶頂期、The Magnificentと称されるスレイマニア大帝(1494-1566)の時期に宮廷建築家として活躍したシナン(1490?-1588)は、50歳ぐらいから建築家として仕事を始め、約100年の生涯に477の実作を設計したといわれている。バケモノだ。


夢枕獏の著作によれば、偉大なるビザンチンのアヤ・ソフィア(537竣工)が1000年間維持してきた最大のレンガドーム(直径32.7 - 33.5 m・直径に巾があるのは歪んでいるため)を超えることがスレイマニエからシナンに課された課題だったが、スレイマニエ存命中にその希望を叶えることは出来なかった。シナンが設計したスレイマニエモスク(1557年)はドームの直径27.5m。


スレイマニエがこのモスクに葬られた後、シナンは西の街エディルネにセリム2世の命によりセリミエ・モスクを完成させる(1574年)。アヤ・ソフィアのドームに匹敵するサイズというだけでなく、シナン自ら最高傑作と称した。その時シナン84歳。


読了した直後にイスタンブールに入る。深夜にチェックインしたホテルの窓を開けると、嗚呼、1m先に壁。

 

2015年6月20日土曜日

 
 

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