アレキサンドリア
アレキサンドリア
松岡正剛がクソミソに言っていたアレキサンドリア新図書館だが、ここまで来たら素通りするわけにもいかない。外人用の入館料を払って入る。開架の大閲覧室はダイナミックだ。PC(プレキャストコンクリート)の施工もエジプト一般の建築と比べると、素晴らしいを通り越して感動すら覚える。この開架書庫は大自習室の感を呈していて、格好のデートコースになっているようだ。
湾岸を西に走り『アレキサンドリアカルテット』の舞台、セシルホテルを横目に見ながら、大灯台跡にできたカーイト・ベイ要塞のすぐ近くにあるギリシャ料理屋に行く。アレキサンドリアでギリシャ料理。なんとヘレニスティックな状況だろう。このレストランはテラスからの景色が素晴らしい。
夕暮れが近づきビールを飲む。プヒーっ。目の前に浮かぶクルーザーの向こうに湾の対岸を見る。太陽高度が徐々に下がってくると、あるポイントで湾の対岸に遠望できる大図書館の傾いた大屋根がピカーッと光る。その時点では湾に面した他の建物の垂直面はこちらに陽を反射する角度ではないので、図書館の輝きのみが強調される。唐揚げのおいしい魚を一口ガブッといくと、今度は沈む直前の夕日に照らされた対岸の建物垂直面全体が赤く燃え、大図書館の大屋根は暗く沈む。白濁したギリシャのウゾーをグビッと飲ると、湾岸に居並ぶ建物が夜の灯りで発光しはじめる。どの時間帯でも、大図書館は太陽の光を特権的に扱い、他とは隔絶された世界にひとり屹立する。設計者スノヘッタは、このレストランのあたりから対岸の敷地を遠望し、建物の形状を決定したに違いない。
この湾の佇まいが同時期に造られた都市、テッサロニキと瓜二つであることに気づいた。
2015年5月22日金曜日