アナと、、、
アナと、、、
アナと室内楽の名手たち@紀尾井ホール
アナ・チュマチェンコVn/菊池洋子Pf/鈴木学Va/中木健二Vc/池松宏Cb/齋藤裕介Cl/福士マリ子Fg/福川伸陽Hr
アナ・チュマチェンコは音楽教育者として知られている人のようだが、不勉強でその名前を初めて聞いた。プログラムはモーツアルトのピアノ四重奏(KV493)とベートーヴェンの七重奏(Op.20)。
高校までビートルズ一辺倒だったボクは、大学入学前後から漸く意識的・自主的にクラシックなるものを聴き始めた。その時注目していたのは、ソリストでは技巧を全面に押し出すタイプ、指揮者では独自の解釈を貫き通す巨匠。少し変わった事をやるのが表現者として当然のことと思っていた。バブリーな時代が目新しいものを要求していたし、ボク自身も未熟だった。30年経ち、そういう奇を衒った演奏を積極的に聴く気持ちは失せている。ボクが音楽に求めるものはそんなところに無いことが分かったからだ。
アナたちの演奏は、不要なところで火花飛び散る危険な香りのする演奏の対極にある。アンサンブルの魅力はこういうものだということを演奏が教えてくれる。演奏者相互の応答は極めて礼儀正しく、端正で、少しも刺々しいところが無い。きっと、アナを筆頭に今日の出演者は、皆とても大きな人たちなのだと思う。人を技巧的な勝負で追いつめず、暖かく包み込むようなアンサンブル。夜中に突然遊びに行っても怒りもせずに、酒とつまみ、寝床を提供してくれるような。。。どうしてこういう貧しい喩えしか出てこないのだろう。う〜ん。大切にしている国宝級の茶碗を割ってしまっても慌てず騒がず、別の立派な茶碗をお土産にしてくれるような。う〜ん。いずれにしても、演奏をアナがリードしているのは確かなのだが、それは力尽くではなく、着るものを脱ぎたくなる太陽の暖かさのような包容力を持つ牽引なのだと感じる。
ベートーヴェンの最終楽章で不意の落涙。凄い演奏だった。拍手鳴り止まず。
2015年4月28日火曜日