奈義巡礼 3

 


奈義町は雨。美術館も外壁が濡れて、深く落ち着いた色に見える。


同時期に設計した別棟のレストランが廃業して観光案内所になっていることを、前夜津山で館長の岸本さんから聞いていた。もともと「ファミレスが欲しい」などという田舎の人が言いそうな希望の中で開業したレストランだったので、人口の限られた僻地の町では潰れるのも時間の問題だったろう。ただ、驚かされたのは、図書館の脇に具合の悪い増築部分があったことだ。これについては何も聞かされていなかったので、半ば呆然としてしまった。


でもまあ、これは町立図書館部分の話。現代美術館はきちんと維持されているだけではなく、さらに3作品の力が増しているように感じた。


この美術館は、奈義町のために(サイトスペシフィック)3作家にそれぞれ作品を構想してもらい、建築は雨風を凌ぐための架構=覆い屋(おおいや)として計画した。まず大仏を作り、それを守るための大仏殿を建築することと相似している。3作家とは荒川修作+Madeline GINS、岡崎和郎、そして宮脇愛子。夫々の作品の覆い屋は「太陽」「月」「大地」と磯崎さんによって命名された。一筋縄ではいかないアーティストたちを束ねるために、磯崎さんは設計に着手する前に各棟の名前を決めた。今にして思うと、この「命名」が、困難山積のこの美術館の計画をなんとか実現させたのだと思う。


(つづく)

 

2015年11月11日水曜日

 
 

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