Omar Khayyam
Omar Khayyam
石油を思わせる味とか、砂を噛むようだとか、なにしろ評判の悪いエジプトのワイン「オマル・ハイヤーム」だが、夕食時にはかなりの確率でお世話になっていて、ボク自身はそれほど捨てたもんじゃないと思っている。毎回劇的に味が違うから違うワインに同じラベルを貼っているのかもしれないが。
オマル・ハイヤーム(1048 ? - 1131 ?)その人については酒飲みのペルシャ詩人だと云うことぐらいしか知らないのに、彼の名を冠するこのワインを評価するなどとはおこがましいと思われる。今回は懐に『ルバイヤート』(岩波文庫)を忍ばせて行くことにした。「ルバイヤート」というのはアラビア語の「四行の定型詩」=「ルバーイー」の複数形。『四行詩集』という意味。
小川亮作の解説によると、オマル・ハイヤームは詩人であると同時に「ペルシャのレオナルド・ダ・ヴィンチ」と呼べるような万能の人だったらしい。数学、天文学、医学、語学、哲学を極め、暦法を生み出し『真理の証』という尊称を頂いていた。そして詩も書いた。生没年を考慮すれば「ダ・ヴィンチはイタリアのオマル・ハイヤーム」ということか。
学問に邁進すればする程、超え難い認識の限界に打ち当たり、厭世的・悲観的な思索に深みが増し加わる。詩作と酒でそれらを紛らわし慰めていたさまが詠われているのが『ルバイヤート』だとみえる。万能の人と同じ絶望と悲嘆を分かち合うことは到底出来ないが、今宵も赤ワイン「オマル・ハイヤーム」を偉大な先人の爪の垢だと思って美味しく飲むことにしよう。
大空に月と日が姿を現してこのかた
紅の美酒(うまざけ)にまさるものはなかった。
腑に落ちないのは酒を売る人々のこと、
このよきものを売って何に替えようとか?
(ルバイヤート・110)
2015年10月3日土曜日