煙突とオベリスク

 


六月末に廃業した銭湯『神明湯』の解体工事が始まっていた。建物本体は概ね解体が終わっていて、今は淋しく煙突だけが残されている。RCの煙突はどうやって解体するのだろうか。


「○○鉄筋コンクリート」という社名はもともと煙突をつくっていた会社のものだという話を、その会社の社長から聞いたことがある。日本のRCは煙突によって広まった。銭湯が閉店し、煙突が消え、その会社も今は無い。


仮囲いに掛けてある「解体事業計画のお知らせ」看板には、煙突の高さが30mとあった。それほど高くは見えないが。


この細長いプロポーションで30mです、と言われれば誰でも、ルクソールはカルナック、アメン大神殿に屹立するハトシェプストのオベリスクを即座に想起するであろう。エジプトから多くのオベリスクが国外に持ち出され、現在エジプト国内には7本しか残っていない。その7本の中で一番背が高いのがこのオベリスクだ。海外に持ち出されたものは、世界中の都市で象徴的、記念碑的な新たな場所を与えられ、永遠の命を生き続けている。


無数にあった銭湯の煙突は、今何本ぐらい残っているのだろう。永遠を前提とする構築物と、最初から寿命を想定して建てられたものとの対比は、鋭く哀しい。

 

2014年9月7日日曜日

 
 

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