嘘つき首相

 


海外のジャーナリズムは「嘘つき首相のクーデターによって、日本は戦争出来る国に方向転換しようとしている」ことを正確に報道している。鋭く対照的に、ジャーナリズム不在、大本営の手先が巾を利かせる日本では、この動きは意図的に小さく扱うか黙殺するかをクーデターの首謀者本人によって要請され、それに従うメディアがいるという驚くべき状況に陥っている。報道されないことに真実が潜んでいるのは、権力が強まり危機が身近になった時期に特有の現象だ。


世界各地の危機的状況は、今後の日本に無関係ではない。


ラマダンに入るタイミングを狙ったのだろうか、シリア/イラク方面では、カリフ制を掲げ新生イスラーム国(IS)樹立が宣言された。過激派、穏健派を問わず、カリフ制再興は世界のムスリムにとっての夢と云ってもいい。だが、自由と民主主義を価値の最上位に置くアメリカは心中穏やかではないだろう。


イスラーム学者・中田考は自由と民主主義について次のように語る。


「人間が自由であるとの錯覚、幻想に陥っている西欧人は、単に自分たちを縛る文化拘束性に無自覚に隷属し、その存在すら目に入らなくなっているに過ぎない。人間の本質的被拘束性を自覚するイスラームは、人間の『自由』を、神の命令の実現のために授けられた神の恵みである『力』の行使の許容範囲と考える。イスラームにおいては『自由』の想起には神から授かった恵みと神に課された義務の自覚が構造的に伴っているのである。」


「民主主義は、人民の支配を謳う外見とは裏腹に、弱者を犠牲にし、強者を利する支配の一様式でしかない。 いかなる美名で飾り立てようとも、民主主義とは、権力を求める者たちが徒党を組み、勝利した側が与党となって立法の名の下に人々を支配する命令を制定するシステムでしかない。」


中田は、アメリカの自分勝手な世界覇権に歯止めをかけるのは、国境を越えたイスラームの政教一致カリフ制再興しかない、という立場だ。彼と同様、正気のムスリムは、国と言う政治的な単位を越え、信仰に根ざした世界連合を夢見ている。


新生イスラーム国の領域はクルド居住区と重なっていて、大規模な油田もある。ただでさえ山積みされた困難な問題が、このIS樹立宣言でさらに複雑化・長期化するのは明らかだ。アメリカはいずれこの地域に日本の若者を送り込もうとするだろうし、嘘つき首相は喜んで徴兵制の準備をするだろう。高校生の一人娘が女の子で良かったが、彼女と同世代の未来ある若者のことを思うと、これら悲観的な予想が全てはずれてくれることを祈るしかない。

 

2014年7月1日火曜日

 
 

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