葉栗剛展
葉栗剛展
@ときの忘れもの
小さな扉を開けてギャラリーに入ると、奥の吹抜け部分を上下方向も含め埋め尽くすように、こちらを睥睨する2体の木彫像が仁王立ちになっている。双方共身長2m程、裸体に褌、全身に倶利迦羅紋紋。台に載っているので「上から目線度」がさらに増幅している。
小さい空間に大きな作品。
作品が要求する展示空間の適正な大きさとは何か?そんなことをつい考えてしまう程の過剰な緊張関係が漲っている。例えば奈良の大仏の場合、大仏殿は雨風を凌ぐためのギリギリサイズの覆い屋に過ぎず、大仏はあたかも建築を着るかのごとく内部空間に充満している。参拝者は大仏と大仏殿の隙間に潜り込む。
建築に関わる者は、平面作品の場合に感ずる以上に、立体物が喚起する様々な感覚を楽しむことに慣れているのかもしれない。そこを上手く突いてくる小品群が同時に展示されている。浮世絵で平面的に描かれた人物を、木彫で立体的に再制作するシリーズ数点。
大きな身振りの木彫と繊細極まりない着彩は一見して同一人物の仕事とは思えなかったが、作家の内弟子にあたる20代の女性(この方も木彫作家だという)が着彩していると聞いて得心した。
「仁王像」に睨まれながら、京都の画家木坂宏次朗さんを交えて綿貫さんとおしゃべり。造形作家が自身の作品をできるだけモノとして長持ちさせたいと願う場合どんな工夫をするのか、等。
2014年5月16日金曜日