桜
桜
井の頭公園は、かいぼりも終わり池の水も満ちて春爛漫。一年のうちで公園が一番汚くなる季節である。
ゴミとヒトゴミとブルーシートを避けて脇道を歩いていると、季節感無くいつものように赤白のストライプを纏った楳図さんとすれ違った。
桜を描く時、多くが、おそらく何の躊躇もなくピンクを使う。桜=ピンク。ほとんど記号化していると言っても良いかもしれない。染色家吉岡幸雄の『日本の色事典』を見ると「桜色」の項では「春の陽を受けて美しく咲きそろった、満開の桜の花の、ほんのりと色づいた淡い紅色をいう。ここでは平安の昔からなじみ深い山桜系の色としておきたい。」とある。ほんのり、で、淡い。本来の桜色は、マーカーや色鉛筆のドギツイピンクとは無縁のかそけき色のようだ。白に近い色であろう。
前掲書によれば、日本で花と言えば桜、となったのは平安時代以降のことで、桓武天皇が御所の紫宸殿前庭の梅を桜に植え替えて「左近の桜、右近の橘」が並ぶようになってからだとあるが、wikiによれば植え替えたのは仁明天皇時代のこと、とある。いずれにしてもそれまでは梅の方が親しまれていたようだ。『万葉集』には梅の方が桜よりも多く詠まれている。
梅が桜に変わることによって、平安時代には春に野外で夜遅くまで宴会する気候的条件が整ったのかもしれない。ブルーシートは無かったろうが。
梅の花咲きて散りなば桜花
継ぎて咲くべくなりにてあらずや
(万葉集・薬師張氏福子)
鴬の木伝ふ梅のうつろへば
桜の花の時かたまけぬ
(万葉集・詠人不知)
2014年3月31日月曜日