ハヌカー
ハヌカー
NYではこのシーズンに Merry Christmas! ではなくて、Happy Holidays! と挨拶する人が増えてるらしい。ポリティカル・コレクトネスってやつですね。意識したことは無かったけれど、Aさんがユダヤの方と結婚して「ハヌカー」(Chanukkah, Hanukah, Hanukkah)を祝ってるという知らせを聞き興味が湧いた。
「クリスマス=キリストの礼拝」だから、ナザレのイエスをキリストと認めないユダヤ教では、その日を祝う理由が無い。たまたまクリスマスと似た時期にハヌカーがあり、プレゼントを交換する習慣が広まっているけれど、これはユダヤ教の伝統ではないようだ。ハヌカー祭はキスレーウ(ユダヤ暦第9月)の25日から8日間続く。今年は12月16日からの8日間。ヨハネ10:22 にもある『神殿奉献記念祭』というのがこのハヌカー祭のこと。
前165年、ハスモン家司祭ユダ・マカバイオスがアンティオコス4世エピファネスから、異教の神々や豚を安置され汚れたエルサレム神殿を奪回して神殿を新たに奉献したことを記念する祭り。(岩波キリスト教事典)
エルサレム神殿を奪回したマカベウスのユダは、ヘンデル作曲の同名のオラトリオになった。その曲中の『見よ勇者は帰る』(See the conquering hero comes)は賛美歌の「よろこべや たたえよや」となりクリスマスの歌、またオリンピック表彰式のBGMとして世界に広まっている。ユダヤ教の祭りであるハヌカーが記念する出来事は、いつの間にか音楽を通じてキリスト教世界にも浸透していた。イエスもユダヤ人として生まれてきたのだから、キリスト教徒が先行するユダヤ教の祭りに対し違和感を持たないのは当然といえば当然だ。
12月25日がクリスマスになったのは、ローマ帝国時代の太陽神信仰・ミトラ教の冬至の祭りを吸収したため、と言われている。果たしてそれだけなのか。クリスマスとハヌカーが「たまたま似た時期」というのは、因果関係の複雑な仕組みに対する我々の無知であろう。4世紀のキリスト教徒が、当時既に500年程の伝統を持って広まっていたユダヤ教のハヌカーにぶつけてクリスマスの日を設定したということもあり得るんじゃないか。(wikiだと「要出典」とか言われるんだろうな、、)
神無きこの国では左程気にならないことも、実は大きな問題を孕んでいることもある。この国全体が大きな問題からどんどん落ちこぼれているんじゃないかと焦る年末。
2014年12月28日日曜日