Zaha HADID

 


市街地に迷い込んだトドのニュース映像を見て思い出し、オペラシティーに Zaha HADID 展を見に行った。


30年前、初めて見たザハのドローイングには衝撃を受けた。ドローイングはもちろん二次元に定着されているが、お行儀のいい三次元直行座標をあざ笑うかのような、あるいはアインシュタインの予想した真実が彼女によって暴かれた、とでも言いたくなるほどの躍動感に満ちている。建築が浮遊し、高速で動いていた。


1985年、GAギャラリーの展覧会では彼女は実作が一つもなく、ドローイングの数々が展示されていただけだった。今回の展覧会は、今や歴史的な懐かしさすら感じるそれらのドローイングに加え、世界の各地で実現したり進行しているリアルな建築を紹介している。スピード感に溢れる造形が映像として大画面に映し出されると、さらに加速する。敷地全体を支配するランドスケープもいい。駐車場のガイドラインに至るまで彼女の創る磁場の歪みに従っている。Zahaはシュプレマティズムに新しい命と体温を与え、艶かしく高速で動く建築を生み続けている。Zahaのスピード感は、計画概念の積み上げによって成立する従来の建築を粉砕し、形体の持つ動きが機能を引っ張り込むような、新しい建築のタイプを提示している。我々は同時代の者として、その革命の目撃者になれたことを喜びたい。


来年はマレーヴィッチの「黒の正方形」から100年。


さて、磯崎さん言うところの「鈍重な亀」=国立競技場・修正最新案模型を見ると、模型台の右肩に「日建設計・梓設計・日本設計・ARUP」のプレートがついていて、何故だか模型台と同じ黒い色で塗りつぶされている。伝家の宝刀『墨塗り』だ。カクレンボで隠れきれずに尻を出している幼子たちのように見える。実施設計部隊なら堂々と名乗っていいんじゃないかい?そもそもこれほど巨大なものをコソコソ作ってしまおうという根性がさもしい。Zahaに失礼である。

 

2014年11月29日土曜日

 
 

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