京劇

 


初めて京劇を見た。普段聞いている男声の概念が崩れ去る。四方田犬彦風に言うと「いったいこのような声を出す人間が同じ地上にいるのだろうかという眩暈の気持ち」。ブルガリアの女性合唱団を初めて聴いた時の衝撃に似ている。


簡単な筋の演目が3、4種類、全部で1時間強。演劇的な要素に軸足を持っているものと、雑技的アクロバットの披露が中心のものがあり、伴奏音楽も二胡を使う旋律的なもの、打楽器のみのリズミカルなものがある。演目に相応しい独特な衣装や化粧が選ばれて、それらの組み合わせは無限にありそうだ。


江青主導の弾圧で京劇は窒息死寸前になっていたようだが、どのレベルまで復活したのだろうか。頂点を知らないものは、初めて見た京劇を迂闊に評価できない。


能や文楽のことを思う。舞台と客席との親密な交感が重要なこれら比較的小さな舞台芸術は、数や規模だけが力だと思う御時世ではなかなか受け入れられないだろう。


終演と同時に空腹であることに気づく。ホテルまで戻ってから近くの食堂で焼きそば。

 

2013年6月2日日曜日

 
 

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