Francis Bacon
Francis Bacon
ベルリンが東西に分断されていた頃。ワセオケの演奏旅行に参加し、西ベルリンでは恐れ多くもシャロウン設計「フィルハーモニーザール」のステージで演奏する機会に恵まれた。
冬のティアガルテンは、寒風吹きすさび人の気配も疎らな鉛色の重苦しい気分に支配されていたが、街が丸ごと現代建築博物館とでも言えるような様相を呈している。フィルハーモニーの東側には同じシャロウンの「州立図書館」が道を挟んで対峙し、そしてシャロウンの二作品を頂点とする正三角形のもう一つの頂点には、ミース・ファン・デル・ローエの「新・ナショナルギョラリー」が鎮座ましましている。夢のようだ。
フィルハーモニーで練習をしていた日だっただろうか、長めの休憩時間にミースの美術館に行ってみた。そこで開催されていた展覧会は「FRANCIS BACON」画家生前最大の回顧展だった。ミースの均質な空間を背景に、ベーコンの油絵がこれでもかこれでもか、次から次へと襲って来る。観客はほとんどいなかったと記憶している。どの絵の前に立っても常に独占状態だったからだ。
興奮状態で大量の画業を一気に見たらドッと疲れた。疲れただけでなく、何かに憑かれてしまったようだ。体が強ばって思うように動かない。絵を見て体調が変わるという経験は初めてだった。以降、全ての展覧会をこの時の体験と比較してしまう。
近美のベーコンはもう最終日だ。東西線の竹橋駅を降りたら、地下鉄構内に展覧会入場券売場の出店があった。不吉な予感、、、
2013年5月27日月曜日