金土日

 


金曜。年上の友人Nさんとの会話。戦後満州からの引揚げ後、Nさん家族は常に飢えていた。やむを得ず大切な反物を農家に持って行き食料を分けてもらうことにしたが、農家の人は冷たい目で反物を奪うと、それと引き換えにサツマイモを道端に投げてよこす。手渡しではなく、投げるのだ。乱雑に転がったサツマイモの姿は、Nさんの記憶に深く刻み込まれている。今、農業を支援しなければ国は滅びると言う声もある。それはどうかな、とNさんは思う。


土曜。Yさん宅。新しく篠田桃紅と良寛らしきを壁に掛けたというので、目の保養に。女性の年齢について書くのもどうかと思うが、3桁の場合は許されるだろう。篠田桃紅さんは間もなく100歳になられる。12年前に「ミースさん」のお話を直接篠田さんから伺ったことを思い出す。あの時、既に88歳だったとは。都々逸風の軸は、良寛だとすれば珍しく達筆。久し振りにYさんとあれこれ楽しくおしゃべりさせていただく。


日曜。渋谷ヒカリエの地下深部で東横線に乗って、Oさんの「タイルの家」訪問。アートと建築の間の、どちらとも定義付けしにくい中間領域に意識的に焦点を当てているOさんご夫妻の活動拠点である。欲望を現実の形に置き換える、その硬質なエネルギーが四角いヴォイドの中に横溢している。面白い体験だった。

 

2013年3月18日月曜日

 
 

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