淡野弓子 小林道夫

 


月曜 歌曲の夕べ@東京文化小ホール


東京文化小ホールのモノクロームな舞台に黒いステージ衣装。演奏者二人の美しい白髪と楽譜の純白。漆黒ベーゼンドルファーの蓋に映り込むピアノ内部の黄金。


マーラー「さすらう若人の歌」が印象的だった。うねり、砕け、飛び散る歌唱に、端正なピアノがピタッと寄り添う。この組み合わせはウィーン世紀末でいうと、美しい額縁におさめられたココシュカの荒れ狂う画布を想起させる。ココシュカ、アルマ・マーラー、グロピウスらに思いを馳せると、さらに淡野さんが学生時代にシェーンベルクの「月に憑かれたピエロ」を演奏したという話を思い出す。彼女は今でこそシュッツやバッハを活動の中心に据えているが、かつて、まだ前衛が前衛だった頃、フルクサスの面々と共に実験的な現代音楽活動をしていた時期もあるという。


アンコールのR・シュトラウス「万霊節」も沁みる演奏。


過去とがっぷり四つに組み、上手で未来に投げ飛ばす、恐るべき後期高齢者の底力を垣間見た夜だった。


1931年生まれの師匠・磯崎新も現役である。

 

2013年2月5日火曜日

 
 

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