エリヤ
エリヤ
上野のミケランジェロ展で、システィナ礼拝堂天井画の登場人物解説を見ても、肝心のエリヤがどこにいるんだかわからない。どうも解せないのでさらに調べてみると、メダイヨンと呼ばれる金色の丸い部分が10カ所あり、そのうちの一つが『エリヤの昇天』だと知った。そうだよね、300人も登場するシスティナの天井画に、エリヤがいない訳がない。でも扱いが小さく、おとなしすぎるんじゃないかな。
というタイミングで、F・メンデルスゾーン(1809-1847)のオラトリオ『エリヤ』(1846)を、所沢市民文化センターで聴く。この日11月4日は、早世の作曲家166回目の逝去記念日。
彼らが話しながら歩き続けていると、見よ、火の戦車が火の馬に引かれて現れ、二人の間を分けた。エリヤは嵐の中を天に上って行った。
(列王記下2:11)
演奏は、旧約の起伏の激しいドラマを鮮やかに、動的に再現した。システィナのメダイヨンで描かれているような、背中を丸めてきちんと馬車に乗っている老人と同一人物の物語だとは思えない。曲に表現されているのは、敵対する異教の預言者数百人をひとり残らず皆殺しにする、血の匂いをまとった怪物だ。そのエリヤが、慈しみ深い神に向かって全幅の信頼を込めて歌う「アリオーソ」の締め付けられるように美しい旋律が、浮き足立った我々を正気に引き戻す。
大切にしたい曲がまた増えた。すばらしい演奏をありがとうございます。
2013年11月6日水曜日