苦海浄土
苦海浄土
初めて入る古本屋で、挨拶代わりに石牟礼道子『苦海浄土』(講談社文庫)を入手。200円。背表紙が呼んでいた。帰宅して夕刊を見ると「水銀に関する水俣条約」を採択する国連環境計画(UNEP)の外交会議が今日から熊本県で始まる、との記事。ドンピシャである。何たる摂理。「ぼやぼやせんと、今読みんしゃい」と言うことだろう。
書かれていたのは地獄。魂が液体ならばそれが凍りつき、肉体から剥離して垂直に加速しながら無限に落下して行くかのような。これまで読んでいなかった事に罪悪感を感じるほどの。
ニュースでは環境大臣が木槌を振り下ろして水俣条約採択を宣言、総理大臣は「水銀による被害とその克服を経た我々」と仰る。
19世紀末の足尾銅山、20世紀半ばの水俣、21世紀初頭の福島、ほぼ70年ごとに同じ事が繰り返されている。
石牟礼道子の生年月日は、父のそれと全く同じだった。1927年3月11日。
2013年10月15日火曜日