コンタ
コンタ
四川省重慶。地表が何万年もかけてゆっくり圧縮されたのだろうか。Google Earthで見てみると、大陸のど真ん中に現れた平行に走るシワ数本。高さ数百メートル、長さは数百キロに及ぶ山脈状の地形になっている。その山脈を直行方向に断ち切るように流れる揚子江。グランドキャニオンはコロラド川により浸食され川の流れる方向に削られ出来た地形であることが、見れば素直に受け入れられるのと違い、ここは、如何なる自然と時間のメカニズムでこの地形が出来たのか一瞬分からなくなるような不思議な光景である。シワよりも揚子江が先にあったのだろうな。その不思議な切断面にほど近い山頂付近、森林公園の一角が敷地だ。
久し振りのコンタ計画。
コンタ(contour)は等高線のこと。建築は地面の上に建つが、その敷地は必ずしも平らであるとは限らない。今まで経験したことの無い、複雑な起伏に富む敷地は、現場を訪ね、模型をつくり、毎日眺めながら、徐々に身体化されていく。初めて会った人の顔をよく見て、顔の起伏を視線でなぞり、顔を覚えて、その人の性格まで読み取ろうとする行為にも似ている。そのアプローチの仕方は視覚至上主義と云うべきだろう。だが、コンタ模型を毎日手で触り、なでて凹凸を感じれば、より深いレベルで地形との同化を期待出来るのではないか。計画中、常に模型を手元に置いておく意味はそこにもある。
そこで、毎日模型をなでたりさすったりしながら計画を進めることになるのではあるが、その模型の大きさは1/1000。1mのものは、模型上で1mmにしかならない。身長が2mmに満たない人間の性格を読み取るのは楽ではない。長い付き合いをしたい。
2012年5月17日木曜日