石元泰博

 


石元泰博さんが亡くなられた。今日は葬儀。


大きなズームレンズ付きの一眼レフを持った、ロビン・ウィリアムス似の写真家、須藤昌人さんが葬儀会場にいらっしゃった。20年以上前、磯崎新展のための木製建築模型の撮影時のことなど少し立ち話ができ、お互いヘトヘトになったその時のことが鮮やかに甦る。


太陽光が刻一刻と変わる実際の建築撮影は、どこかで思い切らないといつまでもシャッターが切れないので、さすがの石元さんもそれほど長時間かけて撮影する訳ではなかったが、建築模型の撮影は凄かった。


そこかしこにセザンヌやルノアールなどが木箱に納まって積み上げられているヤマト運輸の美術倉庫を撮影スタジオとした。太陽光に影響されないので、カメラアングルとライティングは石元さん理想の状態になるまで時間をかけてセットできる。だから満足いくセッティングができるまでいつまで経ってもシャッターを切らないことになってしまう。一つの模型の最初のアングルを確認するためのポラロイドを撮るのが、早朝から始めた撮影にも関わらず、夕方になってしまうこともしばしば。最初のポラロイドを撮ってからがまた長い。新たな光源、レフ版、反射のための手鏡、トレーシングペーパーなどの小道具を駆使して光を操り始める、、、


こういう撮影もあるのだ。それは光という彫刻刀で立体を削り取って行く執念の作業だった。


計り知れない貴重な体験をさせていただいたにもかかわらず、その体験が活かされているかどうかと自問すると、何とも心もとない。

 

2012年2月13日月曜日

 
 

▶

▶

◀