同日同刻

 


『同日同刻』(山田風太郎 1979)


1941年12月8日の真珠湾、および1945年8月1日から8月15日までの「最後の」15日間、同じ日、同じ時刻の出来事を対照し俯瞰した開戦と敗戦の記録。同じ著者の「人間臨終図鑑」に通じる切れ味鋭い編集作法だ。浮かび上がるのは、いつの時代も変わらぬ愚かな人間の姿である、と山田風太郎は言う。


読み始めてようやく、もうすぐ12月8日が来ることに気付く。「Remember !」と命令形で言われていたにも関わらず、12月8日はもはや集団の記憶としては消え失せようとしているのかもしれない。同様に、45年の8月に起きたことが自分とは無関係と思う人が大多数を占める現在である。軍隊だ、徴兵だ、強い日本だ、改憲だと、躊躇せず言える条件がすでに整っているということなのか。


読み進むうち知らず涙が落ちて驚く。特に8月6日以降の広島・長崎に関する記述。流れる涙によって初めて、自分の感情に気付かされることもあるのだな。

 

2012年12月4日火曜日

 
 

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