ヴィトルヴィウス

 


「ダ・ヴィンチのあの絵」を学ぶためには、何はともあれヴィトルヴィウスの「建築書」(森田慶一訳註 東海大学出版会)を紐解かにゃならん。


人類史上最古の「建築書」はローマの初代皇帝アウグストゥス(BC63-AD14)に向けて書かれたというからうれしくなってしまう。現在の我々はアウグストゥスも学んだ建築の心得を自分の母語で読むことが出来る。だが、建築が古典的手法から完全に解放された今、この本の存在意義は大きく変わって、西洋古典学一般の資料におとしめられている。学生時代に学んだはずの記憶も忘却の彼方である。心を入れ替え、メモを取り赤線を引きながら正座して再読することにしよう。


冒頭、この本は単に現代的な意味の建築について書いた領域限定的なものではなく「学問の全体系を明らかにした」という宣言がすばらしい。


本は10書に分かれている。


1書   建築の職分と諸技術の領域について

2書   材料について

3書   神殿について

4書   神殿について

5書   公共建築について

6書   私人の住家について

7書   仕上げについて

8書   水について

9書   日時計について

10書  器械について


水や日時計、器械のことまで書いていて、百科全書的、博物学的な知の総合「全体系」を目指していることが伺える。件の人体図は、3書第1章にあった。神殿設計時の「シュムメトリア」についての中で述べられている。日本の「木割り」に近い。基準寸法と全体の構成の比例関係を、人体の計測比同様うまくつくりなさいとの教えである。


つづく

 

2012年1月31日火曜日

 
 

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