PEK
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着陸したときはエコノミークラス症候群寸前、疲労のピークである。それでも、すばらしい空港に招き入れられれば疲れも忘れ、これから過ごそうとする土地への期待も盛り上がる筈だ。
出発するときも到着するときも、空港は世界中同じ手続きで人を堰き止め/流すので、どの空港建築も概ね同じプログラム、同じゾーニングだと言っていい。床の上でやってることは世界各国同じことだ。平らな床やその上に展開する機能的な諸要素(チェックインカウンター周りの仕組みなど)は、どの空港も類似している。だが、屋根の造り方は建築によって大きく違い、無限のヴァリエーションがある。空港建築は屋根こそが設計者の腕の見せ所だ。
オリンピックを契機に整備された北京の第3ターミナルは、大御所 Norman Foster の設計。巧い。
広大な敷地の特性を生かし、自由に水平方向に伸びゆく平面形と、大きく緩やかに弧を描くスペースフレームで構成された一枚の屋根。それを軽々と支えるエンタシス付き垂直柱の列。余計なことを一切やっていない/見せていないので、前現代的な要素を使いつつも古びない。
詳細を見ると天井に貼り上げられた白いアルミルーバーが空間の流れる方向を強調し、ルーバーの隙間からは鮮やかな色で塗られたスペースフレームの鉄骨が透けて見える。この色が空港を祝祭的なハレの気分に盛り上げる。天井全体を小さい三角形で分割しているのは、3次局面のカーブにうまく馴染むようにするための必然であると同時に、ただ大きいだけの空間ではなく、尺度を人の感覚に近づけ、建築に対し親密感を抱かせる効果もある。同じ三角形のモチーフは規則正しく並ぶスカイライトにも反復し現れ、そのリズムが空間を活性化させる音楽になる。
ここまで書いててつくづく嫌になってきた。東京の顔、HNDもNRTも何とかならんのか。
2012年1月20日金曜日