日本脱出

 


友人が日本脱出を企て、実行に移す。明日が出発の日だ。


大震災と原発事故が直接の引金になった。一種の疎開かもしれないが、日本に魅力が無くなっているとすれば、もう戻ってこないかもしれない。


離散したユダヤ人は、2000年間土地に定住することを許されなかったが、それでもユダヤ人としての帰属意識を極めて濃厚に維持し続けてきた。彼らと同じ土俵上での比較は所詮無理があるにせよ、日本人は、大雑把に言うと、海に囲まれ隔絶された島の中で他民族との交流混交が比較的少ないままに現在に至っているので、大多数の我々は自分が何者なのかを自問することも無く過ごしていると言っても間違いではなかろう。地続きで歴史に揉まれてきた人たちの、信仰に支えられたアイデンティティー感覚とは強度が違う。


今後、核の恐怖がおさまらなければ、日本人は止む無く海外に流出し続けるかもしれない。そして世界各地に離散した日本人は、すぐに日本人としての帰属意識を失うだろう。それを防ぐ有効な方法を誰も知らない。


お別れに、人生で2度目のパフェを食べた。宮崎マンゴーの官能的濃厚な味。これは、日本への帰属意識を喚起する記憶の味となるか。

 

2011年6月14日火曜日

 
 

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