Description de l'Egypte
Description de l'Egypte
丸善本店では「西洋古典版画展」なる展示、覗いてみた。額装されたピラネージやデューラー、ターナーなど展示されていたが、即売会の性格もあって、ポスター売り場にあるようなラックに、額装されていない大量の版画がドカッと置かれている。その中の一枚に「エジプト誌」のものを見つけた。ギャラリーの人に尋ねてみると、「エジプト誌」の図版だけで束になって大量にあるらしい。
段ボールに無造作に束ねられたそれらを、たまらず全部見せてもらうことにした。
「エジプト誌」はナポレオンがエジプト遠征時(1798-1801)に学者、画家など総勢百数十人の調査団を随行して地理/歴史/博物/建築などの詳細調査をし、その成果を銅版画の大型本として出版したもの。フランス出版界における空前絶後のプロジェクトだと言われている。全23冊、図版894枚。完本は二人掛かりでないとページも繰れない程の巨大な製本(エレファント版というらしい)を含む。ナポレオンは戦争に負けて、ロゼッタストーンをはじめとするお宝はほとんどイギリス=大英博物館に持ち去られたたが、「エジプト誌」の資料・原稿は死守された。これが契機となってエジプト学、オリエンタリズムへの興味が広がり、ヒエログリフの解読をはじめ、20世紀のツタンカーメンの王墓発見につながっていく。
考古学的、科学的、博物学的、民俗学的、建築史学的、、、に計り知れない価値を有するこの本は、同時に美術品としての価値も飛び抜けている。ナポレオン当時、最高の画家・版画家たちが戦争を横目で見ながら命懸けで描いた線の一本一本は、どんなに拡大してもその美しさを損なわない。あぁ、哀れなデジタル至上主義者たちよ、一度目ン玉ヒンムイてよく見ておくが良い。
「エジプト誌」のうち100枚ぐらいあっただろうか。精緻な版画を一枚ずつ手に取り、穴の開く程じっくり眺めることが出来た。これを至福と言わずして何と言おう。
2011年5月7日土曜日