池田満寿夫

 


池田満寿夫の名を知ったのは、彼が「エーゲ海に捧ぐ」で芥川賞を受賞し、引き続き同名の映画を撮って話題になった頃だった。男子高校生のきれいな海馬に官能全開の作品はしっかり記憶された。映画に主演していたのは、あのチチョリーナだ。先に小説家/映画監督として認知したために、画家/版画家としての彼も今までは「エロの人」だった。


武蔵野市立吉祥寺美術館で池田満寿夫の版画展を見る。もはやエロでもグロでもなんでも来いのオッサンは、かえって素直な気持ちで60年代の初期作品群を眺めることが出来る。


版画を見る喜びの一つは、手に取ってみるほどの近距離で、ザラザラした紙のテクスチャーを感じながら、ひとり親密な気持ちで作品に対峙出来ることだ。作家が向かい合ったのと同じ距離で作品を眺めるということ。サイズと素材。頭蓋にフリージャズのような音が響く。


この美術館は、常設している浜口陽三のメゾチントもすばらしい。こちらは静寂という音楽。


入場料はいつも100円。

 

2011年12月7日水曜日

 
 

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