献体
献体
父の遺志に従い、遺体は浜松医科大に献体した。
「大学病院の地下には献体された解剖用の遺体を浸けておくためのホルマリンのプールがあり、それを洗ったり、浮かんできた遺体を沈めるために棒でつついたりする高額のアルバイトがある。」という都市伝説めいた話が流布されていたのは、大江健三郎著「死者の奢り」(1957)がきっかけのようだ。いまだにそんな噂を信じている人もいないと思うが、献体については知らない人も多いようなので触れておく。
献体とは、医学・歯学の大学における解剖学の教育・研究に役立たせるため、自分の遺体を無条件・無報酬で提供することをいいます。「自分の死後、遺体を医学・歯学の教育と研究のために役立てたい」とこころざした人が、生前から献体したい大学またはこれに関連した団体に名前を登録しておき、亡くなられた時、遺族あるいは関係者がその遺志にしたがって遺体を大学に提供することによって、はじめて献体が実行されることになります。(日本篤志献体協会HPから)
先の高額バイトの噂について神戸大医学部・寺島俊雄教授は、「日本中どこを探しても地下に大きなアルコールやホルマリンのプールを備えている大学医学部や病院などないし、まして死体洗いのアルバイトなど募集するはずがありません。だいたい揮発性のアルコールやホルマリンのプールが病院の地下にあったら、引火爆発の危険性がありますから消防法に違反することは間違いありません。神戸大学では献体されたご遺体は、大腿の動脈よりホルマリンや石灰酸からなる保存液を流す防腐処理を行い、その後は一体ごと別に白布に包み、乾燥を防止するためのビニールの納体袋に入れてチャックを閉め、ステンレス製のトレイに載せ、一体ごとに保管庫に保存します。このような方法により、何年でも保管することができます。 決してアルコールやホルマリンの水槽にご遺体を長い期間漬けることはしません。」
2011年11月18日金曜日