エジプト8
エジプト8
カイロに戻って来た。考古学博物館との対面だ。展示計画などという手法を採らずとも、膨大なコレクションを擁する巨大倉庫は迫力満点、展示品に直接マジックで整理番号を書き込むやり方は現代的にすら見える。ルクソールでの一ヶ月以上に渡る発掘・調査作業で古代エジプト漬けになっていたボクは、この倉庫のような博物館の所蔵品一つ一つの背景が大まかに分かるようになっていた。
展示のクライマックスはあのツタンカーメン、黄金のマスクと埋葬品の数々。人類はここまで美しいものを創ることができるのだ。
以降、CARTIERなどエジプト王朝時代のものをコピーした宝飾品を目にすることがあっても、感動の振幅がまるで違う。エジプトの新王朝時代のものを見て感じるのは殷時代の青銅器を見て感じた「古い立体はすばらしい」という感覚と近い。CARTIERは3400年後に残っているだろうか。今のうちにどこかに埋めておけばいいのかな?
人に許されているのは過去に学ぶことだけだ。博物館を彷徨いながら深い絶望に沈み込みそうになるのは、学ぶべき過去の圧倒的な積層がボクを打ちのめすからだろう。その感覚がボクを未来に対して謙虚にさせる。
2010年9月3日金曜日