エジプト5

 


発掘現場、マルカタ王宮跡では何をしていたか。


先ず、砂に埋もれているものを掘り起こす。砂漠の砂はパウダー状で細かく、遺跡の上を覆っている砂を取り除けようとしても、エジプト人の人夫が目の粗いザルのようなもので運ぶ間に全部こぼれてしまう。砂漠は砂だと思っていたら、その砂は水に近い性質のものだった。どうしてこんな効率の悪い道具を使っているのだろうと思っても、5000年間これでやって来たのだろう。郷に入ればエジプト人に従えということだ。その効率の悪いやり方でも飽きずやっていれば、次第に砂に隠れていたものが姿を現す。


モーセがエジプトを脱出する100年以上前、新王朝の文化的絶頂期第18王朝アメンヘテプ3世のマルカタ王宮は、ワセダハウス同様泥レンガを積んで壁を造っている。ローマがアーチを発明する遥か以前のことだ、屋根は木や草で平らな面を造り、裏表に泥を塗って仕上げる。そうして造った内部空間の平坦な天井には色鮮やかな天井画が描かれていた。石造の神殿建築と違い、住居用の木造屋根は比較的短期間で天井画もろともドサッと崩壊したと思われる。


廃墟になった王宮は、3000年以上砂に埋もれて紫外線による変色から守られ、雨の降らない気候も幸いした。天井の破片は当時の色彩のまま、砂の下からザクザク出て来た。顔料の一粒一粒がエジプトの強い陽光に照らされ新しくキラキラ輝いている。破片は様々な形、大きさで、厚みも違う。これを1枚の天井画として復元するジグソーパズルが調査隊のミッションだ。


つづく。

 

2010年8月25日水曜日

 
 

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