エジプト4

 


ホメロスがイーリアスで「百門の都」と謳ったナイル東岸のテーベ。今はルクソールと呼ばれるこの街の、ナイルを挟んだ西岸「死の街(ネクロポリス)」が、我々調査隊の滞在するワセダハウスのある場所である。


日の出前に起きて発掘現場で午前中を過ごし、昼にワセダハウスに戻って室内作業をする。昼過ぎに外にいると百発百中で熱射病になるからだ。ここで満月を2度見ることになった。正露丸は手放せない状態が続いている。


ワセダハウスは、周囲の砂を水でコネて型に入れ、天日で自然乾燥させてつくった泥レンガを積んで、仕上げに泥を塗る現地の在来工法で作られており、分厚い壁がエジプトの容赦ない日射から我々を守ってくれる快適な建物だった。中庭のあるロの字型の平面には小さい入口が一カ所だけ開き、夜間は凶暴な野犬の襲撃を防ぐための要塞となる。


厳しい自然と共存するには、土地の材料を使い昔ながらの工法で建物を造るほかは無い。


つづく。

 

2010年8月24日火曜日

 
 

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