映画
映画
ある時は作曲家、またある時は演奏家、そして俳優、はたまた映画監督でもある才能豊かな坪川拓史さんとお会いした。
小学生の頃から音楽環境はクラシック一色だったという。バルトーク、ストラヴィンスキー、ショスタコービッチ、そしてJ.S.バッハ。なんという小学生だ!!! 武満徹に倣い、新作を作る前にはマタイ受難曲を聴くらしい。
今日は既に撮影が始まっている新作「ハーメルン」について、映画監督の口からその内容を聴く贅沢な時間を過ごすことが出来た。ありがとう。
建築は映画作りと似ていると言われる。構想は建築家/監督の頭の中で最初期から既に完成形として準備されているが、計画が進行するにつれて想定/想定外の事件/条件が止めどなく降り掛かってきて、最初の構想から多かれ少なかれずれていく。だから最初期の遠投力が建築/映画には必要なのだ、というようなこと。その通りだ。
だが、それだけではない。建築は施主が公/私に関わらず、基本的には他人が蓄えた資金を使って造ることになる。映画作りの資金集めは監督が中心になってスポンサーを捜すことになるだろう。これも基本は他人のお金だ。そして建築も映画も、与えられた資に対してどれだけ誠実に向かい合えたかが竣工/完成後も果てし無く問われ続ける。
などと映画と建築を行き来しながら坪川監督との会話の後で、彼ではない3監督による3作品オムニバス短編を一緒に見た。プロの前で映画の評価を下す立場ではないと思っていたが、オムニバス3作品を見た後に坪川監督の前作「アリア」の予告編を同じスクリーンで拝見すると、その違いは歴然としている。映画/建築は、向上心と美意識が無くては始まらない。
坪川監督は「シナリオ」ではなく「設計図」を書くと言っていた。新作「ハーメルン」が待ち遠しい。
(写真は「ハーメルン」の舞台となる福島県昭和村の廃校となった喰丸小学校)
2010年8月18日水曜日