エジプト2

 


エジプトに着いたら、先ずカイロで1週間程滞在して心と体を馴染ませることになっていた。


カイロは喧噪の街だ。クラクション鳴らしっぱなしのタクシーに乗ると、運転手は得意顔で一方通行を逆走する。「バクシーシ」を連呼する極貧の大群が外人と見るとまとわりついてくる。街中に羊、香辛料、香水、あらゆる匂いが充満している。そして定時に鳴り響くコーラン。細胞の一粒一粒が生き返る。心はすぐに馴染んだかに見えた。


「ナイルの水を飲んだものは必ずナイルに戻る」と言われている。だけどホントは「ナイルの水を飲んだものは必ず腹を壊す」。わざわざコップで水道水を飲むわけではないのだが、何かの拍子口に入ってしまうのだろう。歯磨時の水、うがいの水もヤバかったのかもしれない。かつて経験したことの無い程に長い、正露丸との付き合いが始まったのだった。体が馴染むのには時間がかかるものだ。


「心は燃えても、肉体は弱い。」(マルコ14)


つづく。

 

2010年8月17日火曜日

 
 

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