ギリシャ
ギリシャ
設計を始めたのは2004年だった。ギリシャはテサロニキの"MEGARON"コンサートホールがこのたび竣工。国が沈没しかけている時に、よくぞここまで辿り着いたと思う。(worksの写真を更新)
ギリシャ程官僚的で、お役所的な国家も珍しい。国家の主たる産業は「役所」だ。建築に関わる手続きを開始し、それが実感として分かった時には既にそのペースに巻き込まれていた。
出来るだけ複雑な手続きを踏み出来るだけ時間をかけて出来るだけ多くのハンコ付き書類を用意し、それを全て公用語の!ギリシャ語に翻訳しなくてはいけない。翻訳が正確であることは公証役場のハンコが保証する。何度ギリシャ大使館と公証役場に通ったことか。融通とか、阿吽の呼吸とかいう概念は、誇り高きゼウスの末裔には無い。
こういう国の建築設計は、プロジェクトの始まる最初期の遠投力が勝負だ。初速が大きくないと、迫り来る公式書類の作成に追われて、設計そのものが出来なくなってしまう。チャレンジングな現代建築が、この国でこれまでほぼ皆無だった訳が分かる。
ギリシャで公共の建物をつくる時には、設計チームは、施工の段階で解体され再編成される。法律でそう決まっているのだ。今回の建築も法律通りに、我々チーム・イソザキは設計完了と同時に契約が終了し、施工現場では新しく作られたギリシャ人チームが計画を進めることになった。
現場を見ないのに工事が進むという、かつて経験の無い事態だ。
つづく
2010年5月17日月曜日