MEGARON

 


エーゲ海の北端、マケドニアのテルマイコス湾に面するテサロニキ。街の名は、紀元前4世紀にこの街をつくったアレキサンダー大王の妹の名前に由来する。以来この地域の国境線は頻繁に書き換えられて今はギリシャの一部。


その街にコンサートホールを設計して、それがようやく竣工に近づいている。


ギリシャの建築雑誌に書いた文を転載。



「恵みと平和が、あなた方にあるように」

(テサロニケの信徒への手紙Ⅰ 1:1)

 

設計者選定プロポーザルにより選ばれた「チーム磯崎新」が設計を始めたのは2004年初頭のことである。

 

求められていたプログラムは、既存のオペラハウスに隣接する敷地に、リハーサル・ホールをつくることであったが、わたしたちの提案は室内楽ホールとして最適の500人規模のコンサート・ホールだった。コンサート・ホールの舞台をオペラハウスのステージと同じサイズにして、リハーサルにも利用可能な設備的工夫(可動壁)を盛り込み、施設の稼働率を上げる提案が認められた。建物は、コンサートホールの他、コンベンション・ホール、ミュージアム、レストランを擁する計画となった。

 

メガロンは、テルマイコス湾に突き出た埠頭に建ち、湾越し西方にオリンポス山を望む絶好の立地にある。既存のオペラハウスは海に背を向け街に対して正面のファサードを対峙させているが、新しいコンサートホールは海側にエントランス・ホワイエを設けた。一番見晴らしの良い場所をエントランスとして開放し、コンサートなどのイベントが無い日も、施設を海岸沿いの散歩コースの一部として日常的に活用し、階段状の建物を丘に見立てた山登りや、レストランでの食事もできるという趣向である。

 

既存のオペラハウスが男性的な外観を見せるのと対比的に、この建物は白い大理石をまとい女性的とも言える姿をしている。2つの建物に挟まれた空間は、オリンポス山を背景とするイベント広場となるだろう。

 

メガロンに新しい家族が加わり、オペラハウスとともにこの地域の音楽文化の豊かな発信源となることを願うものである。

 

2010年4月7日水曜日

 
 

◀

▶